上棟式での餅まきは、「散餅銭の儀」という災いを祓うための儀式の中で、餅と銭をまく事がもとになっているようです。
家を建てることは大きな厄災を招くという考えがあり、その厄を避けるために餅や小銭をまいて他人に持って帰ってもらうという説があります。
古い時代には、家を建てるということは、(地域)の共同体による共同作業でした。
「家を建てる」=「富がある」ということの象徴で、その富を地域の共同体で分け与えることで、厄災(家を建てられない人の嫉妬も有ったと思います)を避けるために、神饌であり保存食でもある『餅』や富の分配の形としての『小銭』をまく(分配する)ことが、地域の共同体の中での生活を円滑におこなうための習慣だったようです。
平安時代から鎌倉時代にかけて上棟式そのものの習慣が広まり、一般庶民も行うようになったのは江戸時代からだそうです。
敵味方の区別無く、一同に介したらおめでたいということで、源平合戦の際に、赤と白の旗印に分かれて戦った事が由来しているという説が有力です。
また、赤色が赤ちゃん、白色が死や別れを意味し、その2つの色を組み合わせることによって、人生そのもの(人の一生=ハレの舞台)を表しているからという説も有ります。
中国では、赤はめでたい色として有名です。
日本人の感性、美意識も関係しており、要は白色と赤色を組み合わせる事で、赤い色が最も美しく爽やかになると感じたようです。
上棟式(じょうとうしき)とは、日本で建物の新築の際に行われる神道の祭りです。
棟上げ(むねあげ)、建前(たてまえ)、建舞(たてまい)とも言い、今では神道でも仏教でも宗教を問わず上棟式は行われます。
建物が完成した後も、建物が無事であるよう願って行われる儀式で、通常は柱などの基本構造が完成した際に行われます。また、鉄筋コンクリート造のビルの場合でも、主な構造が出来上がった時期に行います。
ここ遠州地方では、屋根上に祭壇を設けそこで祭祀を行いますが、地域によって異なります。
木の神様の屋船久久遅命(やふねくくのちのみこと)、建物の神様の屋船豊宇気姫命(やふねとようけひめのみこと)、工匠(大工)の手置帆負命(たおきほいのみこと)、彦狭知命(ひこさじりのみこと)の四柱の神様と、生まれた土地を領有・守護するいわゆる土地神さまの産土神(うぶすなかみ)を祀ります。
修祓(しゅばつ)
一番高い棟木(むねぎ)の設置が完了したらまず、修祓(しゅばつ)祭に先立ち、参列者・お供え物を祓い清める儀式(=しゅばつ)を行います。
降神(こうしん)
祭壇に立てた神籬(ひもろぎ)台に、その土地の神・地域の氏神を迎える儀式。
献饌(けんせん)
神に感謝し、供え物を神前に供える事です。一般的なのは大麻(おおぬさ)[榊の枝に麻と紙垂(しで)を付けた祓の道具]や塩湯(えんとう)[塩を溶かした湯あるいは水の器に入れ、榊の小枝で祓う]によるお祓いです。
祝詞奏上(のりとそうじょう)
その土地に建物を建てることを神に告げ、今後の工事の安全を祈る旨の祝詞を奏上します。
曳綱(ひきつな)の儀
屋上に幣串(へいぐし)小道具、弓矢を飾り、大勢で最も高い所への棟木を曳き上げます。
槌打(つちうち)の儀
曳き上げた棟木を棟に打ち付けます。
散餅銭(さんぺいせん)の儀⇒餅投げ
餅や銭貨を四方に撒きます
昇神(しょうしん)の儀
神籬台に降りていた神様をもとの御座所に送る儀式
直会(なおらい)
当地でお神酒で乾杯し、お供え物の御下がりを食します。
最近では、以上の儀式はほとんど行われず施主が供え物を用意し、現場関係者への感謝の意を込めて赤飯や清酒をふるまうのみにとどまっているようです。